全学部入試と共通テスト利用入試の攻略

目次

共通テスト利用入試:本来のターゲット

さて、ここからはもう一つの重要な柱である、「共通テスト利用入試」の解説に移ります。

共通テスト利用入試とは、1月に行われる大学入学共通テストのスコアを私立大学に提出し、その点数のみで、あるいは大学独自の試験と組み合わせて合否を判定する方式です。

現在、共通テストの点数だけで判定する「単独型」だけでなく、独自の試験を追加する「併用型」も増えています。さらに、早稲田大学のように共通テストの受験を必須とする難関校も増加しており、私大志望者にとっても共通テストはもはや避けて通れない関門となっています。

しかし、ここで冷静に理解しておかなければならないのは、この方式の「本来のターゲット」が誰であるか、ということです。

大学側がこの入試を設置している大きな狙いの一つは、幅広い科目をバランスよく勉強している、国公立志望の優秀な層を確保することにあります。また、わざわざ大学のキャンパスまで足を運ばなくても受験できるため、地方に住む優秀な学生を獲得したいという側面もあります。

そのため、3教科に特化して学習してきた私立専願の受験生にとっては、国公立を第一志望とする層と同じ土俵で戦うことになり、要求されるハードルは想像以上に高くなっているのが現実なのです。

共通テスト利用入試の注意点①:最低60%以上の得点率

具体的に、共通テスト利用入試で合格を勝ち取るためには、どの程度の点数が必要なのでしょうか。

その難易度は非常に高く、合格ラインには明確な「壁」が存在します。一般的に、私立大学の共通テスト利用で合格を手にするには、最低でも60%以上の得点率が必要だとされています。これは、いわゆる日東駒専レベルの大学であっても例外ではありません。むしろ、これらの大学であっても、実際のボーダーラインは6割後半から7割中盤にまで跳ね上がることが珍しくありません。

私立専願の受験生にとって、この得点率をクリアすることは決して容易なことではありません。

個別入試の対策をメインで進めている中で、共通テスト特有のスピード感や、独特の出題形式に短期間で対応するのは非常に骨が折れる作業です。「なんとなく受けて、運良く高得点が取れる」ような甘い試験ではありません。

国公立大を目指す層が、確実な滑り止めとして出願してくる中で、私立専願者がこのボーダーラインを突破するためには、共通テストに向けた相応の準備と、揺るぎない実力が求められるという客観的な事実を、まずはしっかりと受け止める必要があります。

共通テスト利用入試の注意点②:実力が結果に直結する試験

ここで改めて、厳しいようですが強調しておきたいことがあります。共通テスト利用入試において「ワンチャン」、つまり「奇跡的な逆転合格」への期待は一切通用しません。

共通テストはマークシート方式であるため、運が良ければ点数が上がるのではないかと楽観視する方がいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。共通テストの問題構成は極めて緻密に設計されており、受験生の実力が恐ろしいほど正確に、そのまま点数へと反映されます。

特に数学や理科といった理系科目において、まぐれで大幅な得点アップができるようなことは、統計的にもまず起こり得ません。模試の結果から本番でいきなり20%も30%も得点が跳ね上がるような「奇跡」は、期待すべきではないのです。

共通テストは、実力不足を精神論や運でカバーすることができない、極めてシビアな試験です。そのことを十分に理解し、模試の結果を真摯に受け止め、着実に実力を積み上げる姿勢こそが、合格への唯一の道となります。

共通テスト利用入試の注意点③:出願のタイミング

共通テスト利用入試の戦略を立てる上で、決して見落としてはいけないことは「出願のタイミング」です。これには「前出願」と「後出願」の二種類があり、それぞれのリスクと難易度を正しく理解しなければなりません。

まず、共通テストの本番前に出願する「前出願」は、自分の点数が判明していない状態で申し込むため非常に勇気がいりますが、その心理的ハードルの高さゆえに、倍率は比較的低く抑えられる傾向にあります。ただし、自己採点の結果が目標を下回った場合、高額な出願料が無駄になってしまうというリスクを伴います。

一方で、共通テストの結果を確認してから出願できる「後出願」は、自己採点に基づいて「確実に受かりそうな大学」を選べるという圧倒的な安心感があります。しかし、世の中の受験生の多くが、同じように「結果を見てから安全なところへ」と動きます。その結果、当然ながら合格ボーダーラインは上昇します。前出願であれば合格できていたはずの点数であっても、後出願では容赦なく不合格になる、という事態が頻繁に起こるのです。

これらのメリットとデメリットのバランスを考慮し、取るべき戦略を慎重に判断しなければなりません。

共通テスト利用入試の注意点④:「縦のライン」の出願戦略

共通テスト利用入試において「全落ち」という最悪のシナリオを回避するためには、「縦のライン」を意識した戦略が不可欠です。

やってはいけない典型的な失敗例は、自分の予想得点に近い、例えばボーダー80%の大学ばかりを並べて出願することです。もし本番で予想をわずかでも下回れば、これらすべての大学の合格を失い、受験料も時間もすべてが水の泡になります。これは、受験生のメンタルにも、家計の負担という面でも、絶対に避けるべき事態です。

正しい戦略は、ボーダー80%の「挑戦校」、70%の「実力相応校」、そして確実に合格を押さえるための60%の「安全校」というように、レベルを階層化した「縦のライン」を組むことです。この安全校の存在が、本番のプレッシャーを和らげる精神的なセーフティネットとなり、結果として上のランクの試験にも良い影響を与えます。

また、3教科入試よりも4教科、5教科と教科数が多い方式の方が、一教科あたりの負担が増えるため、結果として合格ラインや倍率が低く出やすいという傾向があります。得意教科が複数あるならば、あえて教科数の多い方式を狙うのも、競争を避けるための有効な戦術です。

まとめ:正しい情報と戦略的な計画を

全学部入試も共通テスト利用入試も、一見すると便利で受けやすい魅力的な方式ですが、その実態は、非常に高い競争率とシビアな得点争いが繰り広げられる、厳しい戦いの場です。

しかし、だからといって私立専願者がこれらの試験を敬遠すべきではありません。共通テストを実際に受験することは、本番特有の張り詰めた空気感を肌で感じる貴重な経験になりますし、正しく使えば出願の選択肢を劇的に広げる強力な武器にもなります。

大切なのは、なんとなく雰囲気で出願するのではなく、具体的なリスクとメリット、そして数値に基づいた客観的な難易度を正しく理解することです。

保護者の方と受験生本人が、同じデータを共有し、納得感のある「戦略的な計画」を立てること。これこそが、激戦の私大入試を勝ち抜き、合格を勝ち取るための最大の鍵となります。

入試は情報戦であり、そして自分を律する心理戦でもあります。正しい情報を武器にして、後悔のない、最善の出願戦略を実行してください。

皆様がそれぞれの目標に向かって、最高の結果を出されることを心より応援しております。

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